Spring 2018

Alice Waters (アリス・ウォータース)

言わずと知れたイノベーションの発信地サンフランシスコ ベイエリア。

テック業界にスティーブ・ジョブスがいるなら、食の世界にはアリス・ウォータースという伝説がいます。

ご存知の方ならとっくにピンときているかと思いますが私は彼女の大ファン!日本では数年前NHKで放送された「アリスのおいしい革命」が今だに人気で熱心なファンも多いと聞きます。

このアリスさん、つい先週も日本にいたようですが、70歳を超える今も世界中を飛び回るスーパーおばあちゃん、などとお呼びするにはあまりに失礼で、いやもう、本当に偉大な方なのです。

アメリカで最も有名な料理人であり、全米一予約が取りにくいと言われるレストラン「シェ・パニーズ」のオーナーであり、カリフォルニア料理の祖、オーガニック農法、スローフード運動、食育活動などを世界的に牽引するリーダーであり・・・・

サンフランシスコがオーガニックの街、スローフードの聖地などと呼ばれる所以は彼女の功績によるものが大きいと言われています。なんだか意外・・・
ファーマーズ・マーケットも、地産地消の考え方も、農業の盛んなカリフォルニアでは自然発生的に、ずっと昔からあったものだとばかり思っていたので。

それがどうやら違って、たかだか40年かそこらで、たった1人の小さな女性が始めたレストランが、コミュニティーを巻き込みながらこの土地の新しい食文化を創り、やがてそれはアメリカの食の世界を塗り替えるまでになり…おいしい革命、と呼ばれるムーブメントは今や世界へ、ヨーロッパやアジアにまで広がっていると、そういうことらしいのです。

さて、「シェ・パニーズ」ですが、アリスが27歳の時にオープンした世界初のオーガニックレストランで、サンフランシスコ湾の東側、イーストベイの学生街、バークレーにあります。全てはここから始まりました。

世界中のシェフが礼讃する「シェ・パニーズ」。質素な見た目からは想像も出来ませんが、アメリカ料理の歴史を塗り替えた名店。
大学時代留学したフランスの食文化に魅了され、フランスで食べたような美味しい料理を作りたい、そのために食材は妥協せず、厳選したものにこだわりたい。そんな強い信念と高い理想を抱いて、地元の生産者とタッグを組みながら、オーガニック栽培で作られた良質な野菜や果物、肉や魚をレストランに仕入れる仕組みを創り上げていきます。

そして、それを一番美味しい時に、一番美味しく食べられるようシンプルに料理して供す。
オープン当初から変わらず今も、メニューは日替わりでたったひとつのコースのみというこだわりです。

家庭料理でさえも、季節感や安全なものに重きをおく日本人にとっては、特別なことに感じないかもしれませんが、70年代初頭、冷凍食品やファーストフードに人々が洗脳されていたアメリカで、”Farm to Table(畑から食卓へ)”的な理想を掲げて、経験者ゼロ、素人だけでレストランを始めようとしたアラサー女子は、当時かなり稀有な存在だったことでしょう!

料理は食材で決まる、それを供給してくれる生産者のことを料理の”共同製作者”と敬意を込めて呼び、後にこれが地産地消やファーマーズ・マーケットというコンセプトに発展したと言われています。

アリスとシェ・パニーズがなければ今こうして、新鮮で安心、美味しい地元の食材を簡単に手に入れることも叶わなかったかもしれません

アリスはシェ・パニーズでシェフと協働しながら、地元産のカリフォルニアの食材を、フレンチやイタリアンと融合させるなどして、これまで誰もやったことのないクリエイティブな料理の実験に次々チャレンジします。

こうして、生まれたシェ・パニーズのユニークな料理はカリフォルニア料理の源流となり、レストランの卒業生や、様々な形でインスパイアされたシェフなどがさらにそれを広め、発展させ、次第にそのトレンドは”ニュー・アメリカン”という新たなアメリカ料理のジャンルを生み出します。

と、まあこんなことはよく知らず、ニューヨーク在住時代、近所に「Sutton Inn」という素敵なレストランがあってよく通っていました。クリームやバターの使用量も少なく味付けも軽めで、野菜もたっぷり、柚子や味噌など日本の食材を使っていたり、素材の味がそのまま感じられてとにかく美味しい。量も普通のアメリカンの半分くらいでちょうどいい。フレンチでもイタリアンでもない、正真正銘のアメリカ料理なんですが、今、思えばこの店で出されていたフュージョンは、まさに”ニュー・アメリカン”でした。

なるほど・・・・紐解いてみると点と点が立体的に繋がって面白い。
アメリカ料理=重い、大味、美味しくない、と思っている方は、ぜひ一度、Contemporary American, New American, Farm to Tableなどとガイドブックに表記があるお店でお食事してみてください。ネガティブなイメージが一新されるはずです!

さて、脱線しましたが話をアリスに戻しますと、彼女は20年近く食育活動に情熱を注いでいることでも有名です。学校の校庭に菜園を作り、そこで収穫した食材を使って料理しながら食べ物と人間の関係について学ぶ「Edible School Yard 」(食べられる菜園))の輪は、荒廃した地元中学校から始まり、遂にはホワイトハウスを巻き込むまでになり、今では日本も含め世界中に広がっています。

「子供たちが変われば、この国の未来が変わる」そう信じてアメリカの給食改革を牽引するパワーは、「美味しい料理で、世界を変える」と信じて、多くのアメリカ人やこの国の食文化に影響を与えたそのパワーと同じものを感じます。そして、つい目を覆いたくなるアメリカの子供たちの給食を彼女なら本当に変えてしまうのではないかと期待してしまいます。

料理人であるだけでなく活動家、教育者として今尚、精力的に活動を続けるアリス・ウォータースさん、
なんと今日は74歳の誕生日。今後も、優しく温かい偉大なオーガニックの母の活躍からまだまだ目が離せません!

 

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